微課金者に厳しい PSO2ニュージェネシスは MMORPG 的な盛り上がりがむずかしい
※このコラムは以前 note に書いたものを移行してきたものです。
はじめに
PSO2ニュージェネシス(以下 NGS)をプレイしていて感じるのは、微課金者(注1)に厳しいゲーム、カジュアルに遊びづらいゲームだなぁということ。
今回はこの点に触れてみたいと思います。
(注1)「微課金者」とは月当たりの出費が 2,000円前後のプレイヤーを想定しています。
加えて便宜上「重課金者」という単語も使用していますが、月当たりの出費が 10,000円前後からそれ以上のプレイヤーを想定しています。(隔週ガチャの 1回目の天井が 6,000円であることからそこまで課金する人を想定)
FF14 や DQ10 の微課金者
NGS に触れる前にまず同じ MMORPG ジャンルのファイナルファンタジー14(以下 FF14)やドラゴンクエスト10(以下 DQ10)の微課金者について。FF14 や DQ10 の微課金者とは要はほぼ月額課金のみで遊んでいるプレイヤーのことで、FF14 や DQ10 のプレイヤーの大多数を占めていると思われます。
FF14 や DQ10 の微課金者(月額課金者)は機能制限なしで、アイテムも過去のものから最近のものまで入手はさほど難しくなく、その気になれば好きな時に入手できます。過去の期間限定のイベントアイテムも基本的に後に課金アイテム等として入手が可能になります。微課金者も人並みにコーデを楽しんだりエモート(注2)をしあえるわけです。
入手が困難なアイテムもないわけではないですが種類は限られている上にそこまで重要なものではなく無論必要なものではありません。
ただしアイテムのリリースペースは NGS 程ではありません。
(注2)NGS ではロビーアクション、FF14 ではエモート、DQ10 ではしぐさ、とゲームにより呼び名が異なりますが、本文では MMORPG で一般的に使用されている「エモート」と表記します。
NGS の微課金者
一方の NGS の微課金者。
月当たりの出費が 2,000円前後でできることといえば、
(1) プレミアムに加入する
(2) ガチャ(スクラッチ)を12回(1セット)引く
のどちらかでしょう。
(1) プレミアムに加入する
NGS は基本プレイ無料ですが、無課金者には機能が制限された実質フリートライアル版を提供しているだけで、プレミアムに加入することでやっと機能制限なしで遊ぶことができます。
でもそれだけです。
NGS のアイテムは大半がガチャから排出されるため(注3)、プレミアムに加入した微課金者もアイテムを入手するには無課金者と同様に金策をしてゲーム内通貨(メセタ)を貯めて市場(マイショップ)で入手するしかありません。ですが NGS はアイテムがガチャ産で供給量が限られるため、金策をして手が届くのは最近リリースされてまだ希少化していないアイテムや不人気アイテムくらい。人気アイテムや過去のアイテムなどは価格が高騰して入手が困難だったり市場から消えて入手が完全に不可能になっているものも多いのが実情です。
後発や初心者でも人気アイテムや過去のアイテムを比較的普通に入手できる FF14 や DQ10 とは全く様相が異なります。
(注3)NGS では以下のアイテムは大半がガチャから排出されます。
・外見用の衣装
・外見用のアクセサリー類
・顔パーツ
・エモート(ロビーアクション)
・モーション(走行・飛行・着地・待機時等の姿勢)
(2) ガチャを12回引く
ではガチャを12回引く方はどうかというと、NGS は隔週ごとに 50種類前後のアイテムがリリースされるため、月に 12回ガチャを引いたところでお目当てのアイテムが入手できる可能性は極めて低いし、不要なアイテムを市場で売ってもお目当てのアイテムを購入するだけの売却益が得られる可能性も低い。
そもそもプレミアムに加入しておらず機能が制限されているため市場に出品することすらできません。(一時的に出品を可能にするアイテムは一応ある)
冷遇される NGS の微課金者
以上から NGS では微課金者が実質フリートライアル版をプレイしている無課金者と大差ないことがわかるかと思います。NGS の微課金者は無課金者と同様にアイテムの入手が困難なため、人並みにキャラメイクやコーデを楽しんだりエモートができるようになるのはゲーム慣れしていない限りかなり難しいと言わざるをえません。
NGS は一応自身をアクションRPGとうたっていますが、はっきり言って NGS の売りはキャラメイクの自由度の高さとファッションアイテムのリリース頻度の高さであり、バトルやストーリーよりもキャラメイクやコーデの方がはるかにプレイヤーを引き留める力が強いゲームです。ですが現在の NGS の仕様では無課金者はともかく微課金者もキャラメイクやコーデを楽しむのがかなり難しいのです。
これが他のソシャゲなどなら、
「重課金者が優遇されるのは当たり前」
「アイテムが欲しいなら課金すればいいじゃん」
でお終いの話ですが、MMORPG である NGS ではそう簡単な話にはなりません。
MMORPG はプレイヤーが多く集い交わるほど楽しさが増して盛り上がるゲームジャンル。ですが重課金者は数が限られます。同じゲームに毎月 2,000円前後をずっと払い続ける気になる人はそれなりにいるかもしれませんが、同じゲームに毎月 10,000円とか 20,000円をずっと払い続ける気になる人はさすがに多くありません。
MMORPG として十分な数となりうるのはやはり微課金者です。
MMORPG の醍醐味であるおしゃれやエモートを、 微課金者が普通に楽しんでいる FF14 や DQ10 に対して、アイテムの入手が困難でろくに楽しめない NGS。
NGS がいまいち突き抜けられないでいるのは、このように微課金者を冷遇している結果、MMORPG 的なおもしろみをさほど醸し出せていないのも理由の一つでしょう。
NGS の何が問題か
具体的に NGS の何が問題かというと、重要なアイテムまでガチャに組み込まれていて微課金者が入手するのが困難な点。
特にキャラメイクの根幹であるヘアスタイルやコミュニケーションの根幹であるエモートもほぼ全てガチャに組み込まれていて、さらに排出確率が低いレアアイテム扱いとなっておりガチャ誘導のエサにされているのです。
例えばヘアスタイル。キャラメイクができるゲームは初めから 20種ほど用意されてそのうち実際に使われるのが人気のある数種という場合が多いですが、NGS はキャラ作成時から用意されているのが NGS 仕様の女性風ではたった 5種でそのうち使えそうなのがかろうじて 1種か 2種。それらも他のヘアスタイルを入手したら以後まず使われることがないようなものです。それでいてガチャからもそうそう出てこないし市場でも人気があるものはとにかく高くて入手困難。
強力なキャラメイク機能をアピールポイントとしているゲームなのにそのキャラメイクの根幹であるヘアスタイルすら微課金者はろくに入手することができないというちぐはぐっぷり。
PvP バトルならともかく PvE バトルの魅力だけで MMORPG として十分な数のプレイヤーを引き留めるのはむずかしい。バトルだけでなくプレイヤーを引き留める力のあるキャラメイクやコーデもある程度カジュアルに楽しめるような課金体系にできないものか。
ガチャの収入はいくらか減ると思いますが、プレミアムをベースにした月額課金制に移行して、2か月以上継続している月額課金者にはガチャ毎に交換券を配布してキャラメイクやコミュニケーションの必須アイテムであるヘアスタイルやエモート等を入手しやすくするとか、やり方はいくらでも考えられると思うのですが。
おわりに
重課金者頼りでもゲームは存続可能だし仲間内で楽しむだけならそれで問題ありません。実際そのようにして細々と存続しているゲームも結構あります。ですが個人的には、ただ存続し続けるのではなくやはり MMORPG としてゲーム内が大勢でにぎわってほしい。
一概にガチャが悪いと言うつもりはありませんが、MMORPG として十分な数となりうるための微課金者を軽視してひたすらガチャ偏重で限られた重課金者を頼りに刹那的に収入増を図るのではなく、MMORPG としてプレイヤー数の最大化と収入の安定化を意識したゲーム設計・課金体系を考えてほしいものです。